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9話
西原に見送られ、改札をくぐったむつは、ちらっと振り向いて西原に手を振っていた。少し驚いたような顔をした西原だったが、軽く手を振り返してさっさと背中を見せて歩き出していた。
「…仲良くしてますね」
「まぁね。この前のお見合いの辺りからの事も、昨日話したし…先輩が来た理由ね。祐斗も言ってた通りよ。自分でも言ってたし…あたしが、はっきりしないからいけないんだけどさ」
「そう思ってるなら、もう少し…西原さんを大切にしてあげてくださいよ?」
「大切に思ってるわよ…でもさぁ…お兄ちゃんと比べちゃうからね。うーん…好きは好きだけど…違うのかもしれないわね」
「…聞かなかった事にします」
ふぁふぁと欠伸を繰り返すむつを引っ張って、祐斗は新幹線に乗り込んだ。そして、荷物を置いてシートにゆったりと座り、着くまではむつにも寝といて貰おうと思っていた。