521/1090
9話
交代で風呂に入ったむつと西原は、早々に寝る準備を始めていた。寝る準備と言っても、西原には何もない。むつがぺたぺたと化粧水やら乳液やらを塗り、髪の毛を乾かすのを待っているだけだった。
「大変そうだよな」
「…そうね。こういう時には短い方がいいかなって思ったりもするけど」
「でも、切らないんだな」
「短い方が好き?」
「いや、長い方がいいな…って、俺の好みに合わせてくれるのか?」
「どうかな?」
合わせるとは言わないむつは、丁寧に櫛を通してドライヤーで髪の毛の根本から乾かし始めた。