516/1090
9話
「まぁいいや。嫌がる事はしないから。それよりも、山上さんと湯野さんに連絡してみたらどうだ?」
「…うん」
返事をしつつ、すでに連絡する気でいたむつは、もう携帯を耳に当てていた。西原も気になったようで、反対側から携帯にぴったりと耳を当てている。颯介と山上のどちらにかけているのか分からないが、コール音がしているだけだった。コール音がするからには、電源は入っているという事だ。今すぐに気付かないにしても、そのうちに折り返しはありそうな物だが、その期待をむつはしていないようだ。
「…1日1回の連絡の約束したのに。あたしだって、その約束はそれなりに守ってるのにっ‼」
それなりという事は、しっかり守れているわけではないという事だ。西原はむつには人を責める資格など、どこにもないなと再確認していた。