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2話
むつは携帯の画面を見ながら、タバコを吸っていた。山上がやってくると、少しだけ奥につめてやり、また携帯画面をちらっと見たが、何もないのは分かりきっている。
「…仕事ねぇな」
タバコを吸い始めた山上が、換気扇に向かって煙を吐きながら、ぼそっと呟いた。仕事のない日は、なにも今日だけではない。何日か仕事が無い時が続く事もある。山上はそれを分かっていて言っている。
何を今更と言いたげな、少し不機嫌そうなむつの目は、ちらっと山上を見ただけで何も言わなかった。
「…むつと祐斗の地元も雪積もるのか?」
「え?うーん…昔はね。最近は、ほら…温暖化ってやつ?雪なんかほとんど降らなくなったみたい」
「俺の所は雪なんか滅多に降らないっすよ。だから、ちょっとでも降って少しでも雪が残れば大騒ぎでした」
「なら、むつにとっても祐斗にとっても雪は珍しい物になってきてるんだな。よし!!なら、こういう機会を逃したらいけないな。行くぞ」
「………」
行くと言われても、どこへ行くのかとむつと祐斗の視線は山上に向けられている。




