9話
「…お兄ちゃんは知ってるから、まぁ…いっか。酒井さんね、憑喪神だったの」
「憑喪神…ふぅん?」
憑喪神が、あまりよく分かっていない西原は、それで、と続きを促しながら、かりっとしている焼おにぎりにかぶりついた。胡麻と葱の香りがよく、そこら辺で食事するより、うまい物を作ってくれるむつに感謝していた。
「うん、屏風のね」
「屏風?むつの家そんなのあるのか?」
「うん…玉奥の家で使ってたのを、あたしと一緒に宮前家に持ってきたみたい。玉奥の家は、ほら…かなり古いし?他にも憑喪神になってるのって、沢山ありそうだわ」
「楽しそうだな…それで、酒井さんはむつの事も玉奥の親父さんの事も知ってたって事か。良かったな、ストーカーじゃなくて」
「そういう事。で、お見合いは…まぁ破談って事でさ。これからも、付き合いはしていきたいけどね…玉奥の家の事を知ってる人、少ないから」
「それもそうだな。むつにとっては、酒井さんのが兄貴みたいなもんだろうし」
「うん…お母さんとね、次男がね言ってたんだけど…小さい頃、お兄ちゃんって全員集めたくせに、お兄ちゃん居ないって騒いでた事があったみたいでさ…覚えてないけどね。よく遊んでくれてたのが酒井さんだったみたいだし」
「本当に兄貴だな。宮前さんたちが、宮前のお兄ちゃんで、酒井さんは玉奥のお兄ちゃんだな。お前、家族多いな」
「家族も多いけど、お兄ちゃんも多い」