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9話
手伝うといっても、むつに言われた事をするだけで、返って邪魔になっているのではないかと西原は思った。だが、むつはそうとは思ってもいないのか、どこか穏やかな顔つきだった。それに、会話が思い浮かばなかったからか、ぽつぽつとあった事を話し始めていた。
それらを聞きながら、西原はむつが切った野菜を鍋に入れた。夜だからか、野菜をたっぷりと入れたスープを作るようだった。
見合いの事から、最後に宮前を父親がむつを助けてくれた事、玉奥の父親にも助けられた事。むつは、ざっくりとだったが、それらを説明した。自分の事は、ここでは話さなくてもいいかと、省いていたが西原は、特に追求はしてこなかった。その事は、また今度でもいいとの事なのかもしれない。西原が聞いてこなかった事を、むつは少しばかりほっとしていた。自分でもはっきりと分からない事を言って、変に気にさせても仕方ない事だ。そんな西原の気遣いは、優しさだなとむつはつくづく感じていた。