503/1090
9話
「…で?何?」
「あ…えーっと、来た理由か?」
「そう」
当たり前でしょ、と言いたげなむつの顔を見た西原は、ますます困ったような顔をした。
「なぁによ?」
「…むつからちゃんと話も聞けてないうちに、またむつはどっか行くんだなって思ったらさ…」
西原の拗ねたような言い方に、むつはきょとんっとした。見合いの事から、むつの本当の両親。玉奥の家の事、宮前家を巻き込んだ事を話すと言いつつ、まだそれを西原にきちんと話していない。それもまだなのに、またよく分からないうちに、むつがどこかへ行こうとしている。西原にはそれが耐えられない事だったのだ。
「…ゆっくり会えるのいつになるんだよ」