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2話
「………」
しばらくは大人しく、座っていただけのむつだったが、やはり落ち着いていない。山上の方を見たり、祐斗の方を見たりしている。山上は新聞を読んでいるし、祐斗は何をしているのか分からないが、パソコンを触っているようだった。
「………」
する事がないのは、むつだけのようだ。はぁと溜め息を漏らして、むつは携帯とマグカップを持ってキッチンに入っていった。
落ち込んだような後ろ姿を見ながら、山上は呆れたように笑っていたが、むつの落ち着けないという気持ちも分からない事はない。実際、自分の携帯もマナーモードを切って音量を最大にしている。鳴ればすぐに気付くのは分かっていても、自然と携帯に視線が向いている。祐斗もそうなのだろう。パソコンの画面を見ながら、携帯を気にしているようだった。
「…ったく、しゃーねぇやつだ。祐斗、忙しくないならちょっと来い」
新聞を畳んだ山上が、マグカップを片手にキッチンに入っていくと祐斗も後に続いた。




