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９話

何泊するか分からないから、少し多めに下着もシャツも必要だろうと、むつはカラーボックスから服を取り出して、ベッドの上に投げていく。それに寒いだろうからと、分厚くなりすぎない程度に重ね着も必要だからと、Ｔシャツもあれこれ出していく。後は何が必要だろうかと、クローゼットの中を見渡して考えた。

しばらく、クローゼットの中とベッドの上に出した服とを見比べていたむつだったが、よっこらせと立ち上がると普段使っていないトランクを引っ張り出した。安物だが、どことなく古めかしい雰囲気があり、むつのイメージとしては英国人の旅行鞄といった物だった。ボストンバッグの方が、身動きするには楽かもしれないが、仕事であり楽しめる事がないと分かっているのだから、鞄くらいはという軽い気持ちだった。

引っ張り出したトランクを開けて、荷物を詰め込もうとしていると、ピンポーンっとチャイムが鳴った。