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8話
祐斗の分だけは甘いカフェオレにして、むつはお盆にマグカップを乗せた。山上と連絡がつかなくなったのも、顔を見ていないのも今日だけのはずだった。それなのに颯介、山上のマグカップをずいぶんと触れていないような気がしたむつは、拗ねたように唇を尖らせた。
今は祐斗が居る事が多く、コーヒーをいれるのも任せがちになっていたせいもあるかもしれない。だが、むつは颯介と山上がマグカップを使って、ゆっくり一緒に過ごしていたのが、凄く前の事のように思えていた。
「…むつ?」
「ん?何かあったの?」
ひょこっと西原が顔を出すと、はっとしたようにむつは顔を上げた。コーヒーをいれに来ただけのつもりで、もしかしたら意外と長く待たせていたのかもしれない。そう思うと、むつの表情はあっという間に笑みに変わっていた。
「いや…別に…」
「もう…先輩も管狐と一緒で寂しがり?」
「かもな」