494/1090
8話
広げた地図で市町村をしぼりこみ、そこから地区をしぼりこむ作業を、祐斗と管狐に委せているむつは、マグカップをお盆に乗せると、そっと立ち上がった。今の作業は、祐斗がしっかりとしてくれるからと、コーヒーをいれ直しにキッチンに入っていった。むつが席を立つと、管狐がどことなく落ち着き無さそうに、きょろきょろし始めていた。
「…むつさん、コーヒーいれに行っただけだから。すぐに戻ってくるから、大丈夫だよ」
置いていかれたと、そわそわしている管狐を落ち着かせるように祐斗が言うと、管狐は真ん丸な目で祐斗を見上げた。一晩で、そんなに仲良くなれるものなのかと祐斗は、不思議に思っていた。むつが本来なら使えるはずの能力というのは、妖にとっては脅威となる物のはずだが、思えばむつの周りには妖が多い。能力を持ってしても危害を加えない者だからなのか、それとも単純にむつが好かれやすいだけなのか、祐斗にはそこら辺の事は分からなかった。ただ本当に人でも妖とでも、すぐに打ち解けられるのは凄いと思っていた。