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8話
祐斗も無駄だったかもと、県名を読み上げながら思っていたが、むつの膝の上に居た管狐がテーブルに移動してくるのを見て、おや?と思った。それが何を意味するのかは、管狐持ちではないむつにも祐斗にも分からない。だが、管狐はじっと祐斗の指の置かれている所を見ている。次の県名を読み上げるか悩んだ祐斗は、むつの方を見た。
「…そこかしら?」
「かもしれないっすけど…」
「管狐、ここなの?そうなら祐斗の手の上に乗っかってくれるかな?」
むつに言われた管狐は、するするっと地図の上を移動して祐斗の手の甲にちょこんっと乗った。
「…当たりみたいよ?」
「本当っすか?ただ聞いた事のある県とかって事じゃないっすよね?」
「指動かして他を読み上げて。管狐そのままね。違う県だったら、尻尾で祐斗の腕を叩いてくれる?」
「…喋ってくれたら楽なのに」
祐斗はそんな事をぼやきながら、言われた通りに管狐を手の甲に乗せたまま、次の県に指を移動させた。