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8話
「どーしよー…」
足を投げ出したように、ずるずると浅く座り足を伸ばしたむつは、住所を調べる事など出来ないと諦めモードだった。そんなむつを慰めるかのように、胸元から出てきた管狐が、むつの頬にすり寄った。
「優しいなぁ…慰めてくれてるのかな?」
ふふっと笑いながら、むつは管狐のほっそりとした身体を、手のひらでさわさわと撫でた。管狐を撫でながら、むくっと起き上がったむつは、何やら考え込むように、下唇を指先で撫でていた。そんな様子を、冬四郎が面白そうに眺めている。
考え込んでいるが、何かしら思い付きそうな時の仕草だなと冬四郎には分かっていたのだ。口紅を馴染ませる時のように、唇を擦り合わせたむつは、あっと声を上げたが、またすぐにうーんとうなり始めた。