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8話
「…待ってるのって辛い」
「こんな時だから尚更な。でも、お前が拐われた時も家の事で動いてた時も、山上さんも湯野さんも同じ様に辛かっただろうな。勿論、俺も谷代君も西原君もな」
「うん…」
「お前は待たせる側だからな。ようやく待つ側の気持ち分かったみたいで何より」
「こんな時に何よ?お説教?」
「いいや…待つのが嫌なんだろ?」
「…迎えに行くわよ。祐斗と一緒に。でも、1日だけ待とうって朝話してたの…颯介さん、今は凪君を追い掛けて地元にって…連絡するって言ってたから待つ」
「…そうか。それで山上さんは…?」
「分かんない。祐斗、ごめんコーヒーお願い」
むつが声をかけると少し遠くから、はーいと間延びした返事があった。すでに祐斗は、キッチンでコーヒーの用意でもしていてくれたのかもしれない。