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8話
鍵のついている棚を開けて、1冊のファイルを出したむつは、ぱらっとめくっていく。そこには現在、働いているむつ、颯介、祐斗の履歴書などの個人情報が記載されておる物がある。たったの4人しか居ないのだから、見落とす事はないと思っていたむつだが、肝心の山上の物が見当たらない。誰かのと一緒に入っているのではないかと、確認もしてみたが、やはりそこには無かった。
「…ない」
「社長だからっすか?」
「まぁ…あり得なくはないかもしれないけど。社長の会社だからね…でも、書類不備じゃん…」
何かあった時に困ると言いながら、むつはファイルを棚に戻した。
「祐斗、先輩とお兄ちゃんに電話して。社長の家、知ってるかもしれないから」
「はい。あ、でも…宮前さんの連絡先は知らないんですけど…」
尻のポケットに手を突っ込んだむつは、携帯を取り出してロックを解除すると祐斗に渡した。
「履歴から電話かけて」
「分かりました」
人の携帯を使うのはどうかとも思いはしたが、そうも言っていられない。むつは他のファイルを取り出して、素早くページをめくりだしていたからだ。