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8話
受話器を耳に当てていた祐斗は、だんだんと眉間にシワを寄せていった。そして、首を振りながら受話器を置いた。
「留守電になりました」
「…こんな時に寝坊なんてしないはず。そんな無責任な人じゃないもん」
やや不貞腐れたようにむつが言うと、祐斗も頷いていた。適当な部分はあっても、何も言わずに来ないわけがない。今までだって、休みだとしても仕事でむつ、颯介、祐斗が居ない時、むつだけが勝手に動いてる時でも、常に事務所には居た。それに連絡つかなくなるような事も、ありえなかった。
「何かあったんでしょうか…」
「かもしれない。従業員名簿見てみよ」
そう言ったむつは、鍵をかけてある箱から、迷うことなく1本の鍵を掴むとずんずんと倉庫に入って行った。残されても落ち着かない祐斗も、むつに続いてロッカールール兼物置になっている倉庫に入った。