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8話
「颯介さん…何か言ってた?」
「…今日から地元に行ってみるって言ってました。凪君が居るかもしれないからって」
「うん。あたしもそう聞いたよ…社長も知ってるんだと思う。他に何を話したかは分からないけど」
「1人で行くつもりだって言ってましたけど…本当に1人にしといて大丈夫でしょうか?ちかさん達の事もありますし」
「…今日は大人しくしておこ?あたしは…追い掛けて行っちゃおうかなって思ってるわよ」
くっと悪戯っぽくむつが笑うと、祐斗はきょとんっとした顔をした。だが、すぐに笑みを浮かべて頷いた。どうやら、祐斗もそうしたいと思っていたのかもしれない。
「その時は俺も行きます」
「うん、一緒に颯介さん迎えに行こ。それにさ、この子…ずっと凪君と離れてるのも嫌なんじゃないかな…?」
「そうですか?そんな風には…」
見えないと言いかけた祐斗だったが、みなまで言わずに口を閉じた。