1話
「何だ?どうしたんだ、むつ」
西原が声をかけると、祐斗は西原と交代するようにそうっとむつから離れて冬四郎の横に並んだ。冬四郎は祐斗に向かって、先に行こうと顎をしゃくって見せると、祐斗は少し笑って頷いた。
「むつ?」
「ん?」
ぼーっとしていたのか、2度目でようやくむつは西原の傘に入れて貰っている事に気付いたようだった。
「…ううん、何でもない。何か、悲しくなる雪だなって思ったの。真っ白なのって綺麗だけど…寂しくなる色かも」
「そうか?でも…何色にもなるぞ、白は」
「…相手次第で良くも悪くも、だね」
「あぁ…行こうか。宮前さんと祐斗君が駐車場で待ってるぞ?冷えは女の子の大敵だ」
ぱっと西原はむつの手を取ると、ぎゅっと握って自分のコートのポケットに押し込んで歩き出した。むつはつられるようにして歩きながら、そっと西原の手を握り返した。
「…コート似合ってる。今日はいつも以上に可愛いから、すぐには何も言えなかったんだ。それから…あんまり着て出るなよ。変なのが寄ってきたら困る」
「…着なかったら買った意味ないよ?」
「…でも、他の男に見られるってなると、ちょっと腹立つんだよ‼」
怒ったような言い方をする西原を見上げたむつは、ふふっと笑った。寒さなのか、西原の耳が少し赤くなっている。むつはほんの少しだけ、西原との距離をつめると、ゆっくり歩いていった。




