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7話
山上の膝の上から、自分でむつの胸元へとおさまって、シャツの間から顔を出している管狐は、落ち着きなく辺りをきょろきょろしていた。
「…何か管狐が羨ましいな」
「社長っ‼」
帰り支度を整えたむつの胸元を覗きこむように、山上が身をかがめると祐斗がすかさず、むつの前に立った。2人が何をしているのかと、むつは分からないと言いたげマフラーをくるくると巻いていた。
「…何だよお前」
「よこしまな視線からむつさんを守ってるんです‼湯野さん居ないんで俺が、しっかりしないといけませんから」
「よこしまってお前…でも羨ましくなるだろ?俺も管狐になってみてぇなぁ」
「…ちょっとは思います」
「ほらな」
否定は出来ないと祐斗は、ちらっとシャツの間から顔を見せている管狐を見た。確かに、堂々と服の中に入り込んでも怒られないというのは、男なら羨む状態かもしれなかった。