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7話
少しずつ画像は鮮明になっていくが、それでも限界はあるようだった。くっきり細部までは見えないが、むつには十分だった。
「社長…これ、人じゃないと思う」
「あぁ、壁から急に出てきたように見えたな。みや、この部分拡大しながら少し前から再生してくれるか?」
「分かりました」
山上の指示に従って冬四郎が操作をし、再生された映像をむつも祐斗も山上も、ささいな事でも見逃すまいと見ていた。
「あ…やっぱり…」
「壁から出てきたっていうより、これは…何だ?煙みたいに見えたな。それが形になったな」
「うん…霧みたいだったね」
「…これは…女だな、形からして」
「…うん。おの女…どこに向かったんだろ?マンションに居るだけの浮遊霊なら問題ないけど」
「…祐斗、あのマンション居るか?」
「居ませんでしたよ。周りには少し居ましたけど、入った時には何も感じませんでした」
祐斗がきっぱりと答えると、むつと山上は頷いてた。祐斗がこうもきっぱりと答えるとは思いもしなかった冬四郎は、祐斗もこの中で成長しているのかと、本当に兄のような心地になっていた。