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7話
よろず屋まで戻ってくると、むつは上着を脱いですぐにキッチンに入っていった。換気扇の音と水の音が聞こえてくる。タバコを吸うついでに、お湯を沸かしてコーヒーでもいれるつもりなのだろう。
山上に続いて冬四郎もキッチンに入ろうとしたが、入り口付近で立ち止まっていた山上に危うくぶつかりそうになった。
「…山上さん?」
「あれ、見てみろよ…」
よろず屋の狭いキッチンで何か珍しい物でもあるのかと冬四郎が見ると、そこにはむつが居るだけだった。
「…むつがどうかしたんですか?」
「あいつ、胸元に管狐入れてやがる…カンガルーにでもなったつもりか?管狐も大人しく入ってやがるし」
むつのシャツの間から顔を出している管狐は、どことなく落ち着いた感じになっている。捕まえられて瓶詰めにされかけたというのに、いつの間にかすっかり仲良くなっているようだった。