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7話
むつが意外とモテるのは、今に始まった事でもないが、むつは祐斗に言われても素知らぬ顔をしていた。冬四郎も祐斗をからかうのは終わりにしたのか、腕からコートを取るとむつの肩にかけようとしていた。
「…待って」
コートを手に取ったむつは、肩をよく見た。さっきはちゃんと見れなかったが、落ち着いてみれば大丈夫だった。
祐斗から何度も言われたように、肩には小さな顔をした、ほっそりと長い身体を持った狐が、ちょこんっと乗っている。
「本当に管狐だわ…何で?」
「…さぁ?湯野さんの子か?」
冬四郎は以前に噛まれた事があるというのに、怖がる素振りもなく指先をそっと差し出している。