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7話
冬四郎の視線を感じつつ外に出た祐斗は、コートを腕にかけたまま、むつの手をしっかりと握った。建物の中に居たというのに、ひんやりと冷たい手で自分の手が異様に熱いんじゃないかと錯覚するくらいだった。
「むつさん…落ち着いてください。肩に居るのは、管狐ですから。いいですか?管狐です」
「くっ…」
「管狐ですよ、管狐。分かりますよね?」
声は何とか出たが、まだ喋れないようだった。ネズミだと思っていた物が、身体を這い上がってきて、肩に居座っているともなれば、衝撃は大きいのだろう。だが、それはネズミではなく見慣れている管狐の姿だ。それでも、むつは衝撃から立ち直れないでいる。
「管狐です。大丈夫ですから…」
そんなむつに根気強く教えるかのように、祐斗はぎゅっとむつの手を握った。