はじまり
管狐と呼ばれたそれは、分からないとでも言うかのように、首を傾げていた。
「そうかい?俺は…本心からなぎを探していないという事なのか?そんなはずは…」
無いんだけどな、と男は呟いた。だが、本当の所はどうなのか自分にも分からない。一緒に行った回数の多い場所を、最後まで見に行かなかったからには、本当は見付からなくてもいいと思っているのかもしれない。そう思うと、足が止まりそうになっていた。
すでに何度も引き返そうと思ったし、見付からなかったと言い訳しても、咎められはしないだろう。そんな事を、頭の片隅では考えていた。
そもそも、家には母親が居たというのに、幼い子供が居なくなった事に、気付いたのは帰宅した男だった。そして、寒く雪の降る中に探しに出ているのも男だった。母親は知り合いの家に電話をしたりして、子供が居ないかを聞いているのかもしれないが、知り合いの所に居ないのであれば、探しに出ればいいというのに。自らも出てきているという知らせは、携帯にはない。この分であれば、見付かっていたとしても、連絡はして来ないのかもしれないな、と男は溜め息をついていた。