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7話
ぶつぶつと文句を言いながらも祐斗は、むつが指差している鉢植えの方に近付いていく。何か居ると聞かされているだけに、近寄りたくないのは祐斗も同じだった。自分の住むマンションではないのだから、そんなに気にしなくてもいいとは思う。だが、余程嫌なのかもしれない。むつは今すぐにでも出ていけるように、すでに玄関のドアの前でドアに手をかけてスタンバイしていた。そこまでするかと思いつつ、祐斗は植木鉢の後ろ側を覗いた。
「ん?」
祐斗の気配にか、確かに暗がりで何かが動いた。だが、鉢と壁との間はほんの少しの隙間しかない。やはり居るなら、ネズミなのかもしれない。
逃げる準備万端のむつは、じっと祐斗の動きに注目していた。