39/1090
1話
「…お兄ちゃんのは腫れ物に触るみたいな所があるけどね‼」
「それは悪かったな」
くっと笑った冬四郎は、新しく出したタバコに火をつけた。煙を換気扇の方に向かって吐き出しながら、ぐりぐりとむつの頭を撫でた。
「お前のは触れると出るならな…こっから」
少しかがんだ冬四郎が、目元をちょんっと触った。すると、むつは少し驚いたような顔をしたが、ばしっと手を払い除けてうつ向いた。
「…うるさいっ‼」
「何だよ、本当の事だろ?泣き虫」
「泣かないもん‼」
「はいはい、分かったから」
冬四郎がぽんぽんっと頭を撫でると、むつは頬を膨らませながらも、大人しく撫でられていた。何度も何度も冬四郎に撫でられているからか、むつは冬四郎にもたれるようにして寄りかかっていた。




