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7話
喫茶店の前には車が停めてあり、冬四郎はビジネスバッグをむつに押し付けると、さっさと運転席に乗り込んだ。むつは助手席に、祐斗と山上は後部座席に乗り込んだ。
「…お兄ちゃん、仕事は?」
「これも仕事だ。単独行動だけどな」
「あー…だから、浮いてるの?」
「…誰のせいだと思ってるんだ?」
「え?嘘本当に浮いてるんだ…ごめんね」
ふんっと鼻を鳴らした冬四郎はコートも脱ぐと、丸めてむつに投げた。もうと言いながら、シワにならないようにむつは自分の身体にコートをかけていた。
「寒くないか?」
「コート借りてるから平気。暖房効いてくると…お兄ちゃんの運転でも酔う気がする」
「交代はしないからな。で、とりあえず湯野さんのマンションから向かいましょうか。山上さん住所知ってますよね?」
「住所は…場所は分かるから大丈夫だ」
冬四郎は頷くと、すぐに車を発進させた。