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1話
「颯介さんってね、管狐を連れてるでしょ?だから、自分の気持ちって結構抑えてると思うのよね。それが、あぁして表に出るくらいってなると…よっぽどの事があったんだと思う。いつも助けられてるし…少しくらいは、何か出来たらなって」
「…そっか」
冬四郎は目を細めると、むつの顔をまじまじと見た。目尻に寄ったシワからして、冬四郎の優しげな顔をしているというのがよく分かる。
「なぁによ?」
「いや?湯野さんも分かってるだろうよ。お前と谷代君が心配してるって。分かりやすいだろうからな…だからこそ、少しほっといてあげたらどうだ?いつも通りに接してやってさ。お前はそういうの分かるだろ?変に気を遣われるより、いつも通りの方が有り難いっていうのはさ」
冬四郎は何の事を言っているつもりなのか、むつは何やら悩むような顔つきとなった。そして、冬四郎の表情から何か考えを読もうとでもしてるのか、まじまじと見ていた。だが、いくら子供の頃から一緒に過ごしてきた兄とは言えど、冬四郎の考えている事は分からない。それでも、むつは心当たりでもあったのか、小さく頷いた。




