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7話
甘い物を食べ、タバコも吸って落ち着いた所で、冬四郎はそろそろ話を聞きたいと山上に言った。ついさっきまでの優しげな雰囲気はどこへやら、冬四郎の目元は少しずつ険しくなってきている。
山上はそんな冬四郎の顔を、まじまじと見ていた。何年も一緒に仕事をしてきたが、出会った頃はこんな顔を自分に向けるような男ではなかった。見たものだけを素直に信じる、単純さがあったが、今となってはそれはどこにもない。見たもの聞いたものから、さらにその奥。裏にある何かを探るような、疑わしさを持つようになったのだなと感じさせられる。それは、慎重なのであり悪い事ではない。だが、その目を上司であった自分に向けられるようになっているとなると、成長を感じずにはいられない。
何も言わずに、じっと冬四郎を、見ていると気まずくなったのか、居心地悪そうに冬四郎が視線を外した。
「お、まだ俺の方が強いな。勝った」
「…勝ち負けじゃありませんよ。おっさんが見つめあって…誰得なんですか…」
「さぁ?俺らをみて、かっこいいって思うやつからしたら得なんじゃねぇか?なぁ、むつ、祐斗」