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1話
「どうした?」
「うん…今日さ、今の先輩みたいに祐斗と言い合いしてみたりしたんだけど、それも耳に入らないくらいに、颯介さんぼんやりしてて…何を話しても上の空でさ。気にしすぎかな?」
「そんなに、様子がおかしいのか?」
「うん…ここ数日は、そんな感じなの。だから、尚更気になっちゃうのよね。颯介さんってね、結構安定してる人なの。何かあってもわりと落ち着いてるし、いっつも優しそうな顔してて…感情が表に出てこないっていうか…」
「そうか…湯野さんなぁ…俺はほら、そんなに湯野さんの事は知らないからな」
「うん…」
「隠し子とするくせにされるのは嫌か?わがままな奴だなお前は」
「…そうかも。でも、表に出さないでいるなら、いいの。気付けないからね。でも今の颯介さんのは…祐斗でさえ気にするくらい、目に見えてだもん」
ほとんど吸わないうちに灰になってきているタバコを見た冬四郎は、むつの前に灰皿を押しやった。むつは、はぁと息をつくと火を消した。




