360/1090
6話
しばらくすると、冬四郎が戻ってきた。片手にお盆、片手にノートパソコン。そして器用にも足でドアを開けている。むつは呆れたような顔して、立ち上がると手を差し出した。冬四郎はその手に、お盆を乗せた。
「ありがとうな」
「…ノックしてくれたら開けるのに」
「家じゃないんだからいいだろ」
むつが机に湯飲みを置いている間に、冬四郎はパソコンを立ち上げていた。USBを差し込み、慣れた手つきで操作している。
「…何だよ」
「お兄ちゃんがまともにパソコン触ってるの見るの初めてなの…ちゃんと使えるんだ?」
「バカにしてんのか?」
「仕事してるんだなー…って思ってさ」
「何だよ、それ。お前…昨日から何か変じゃねぇか?体調悪いなら早く病院行けよ」
「はいはい」
適当に返事をしたむつは、いただきますと言って湯飲みに手を伸ばした。薄い緑色のお湯という味だった。