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6話
冬四郎に連れられて移動する際、来た時は堂々としていたむつが何やら、落ち着きなさげな顔をしていた。そして、そそくさと冬四郎の側にぴったりとくっついた。その理由が冬四郎には分かったのか、くすっと笑った。そして、いつまでも見てくる刑事たちを、じろりと一睨みした。さっと視線が反れるのを感じた祐斗は、冬四郎はやはり凄いのだと感心していた。
「…どうしたんだ、むつ?」
「べっつにぃ」
「前にしょっぴかれた時に、見た顔でもあったんでしょうね」
そんな事もあったなぁと山上は他人事のように、からからと笑ってた。お咎めがあったわけでもないが、やはりいい経験ではない。だから、わざとらしく冬四郎の隣に移動したのだ。
「…二度とお世話にはならない」
「当たり前だ」
くすくすと笑う冬四郎は、3人に入るようにと小部屋のドアを開けた。