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6話
かつかつと足音を鳴らして、近付いてきた男は、やや固い声で挨拶をしてきた。だが、ソファーに居る山上を見て、ぎょっとしていた。
「…や、山上さん!?」
「やっほー」
にこやかに片手を上げたむつを見て、冬四郎はその隣に視線を向けた。何やら機嫌の良さそうなむつの横には、縮こまったような祐斗が座っている。
「む、むつ‼谷代君まで…やっほーじゃない、ばか…何してんだ?早く戻れなんて言われたから何かと思ったら…」
「なぁ、ここの連中ダメだな。俺が声掛けてもだーれも返事しねぇぞ。それに誰にも止められずに入ってこれなしな」
「な、だ…えぇっ‼部外者がこんな所まで…あぁ…そうですか。申し訳ありません」
むつの頼みの為に動いたあげく、何故こうも注意を受けるのかと、冬四郎は珍しくも不満そうにしていた。