355/1090
6話
刑事たちの視線を感じつつも、山上は何て事はないようだ。むしろ、鬱陶しいと言わんばかりに見返している。そうすると、向けられていた視線が一斉に外される。それが分かるから、むつは楽しそうに笑っているのかもしれなかった。
「…ここには社長を知ってる人は居ないの?」
「俺は有名人じゃねぇよ」
くつくつと笑った山上の横顔は、ドスが効いたような怖い顔をしている。これでは、元刑事なのか何なのか分からない。現職の刑事でさえ、警戒するのも頷ける。祐斗は何も起きないといいなと思いつつ、早く早くと冬四郎を待っていた。
むつと山上が何の遠慮もなく、落ち着きのない刑事たちを観察していると、がちゃっとドアが開いた。ドアの方に視線が集まり、空気がざわつくような感じがした。話し声がするのは、2人か3人分だけだ。だが、大勢がざわついている。そんな感じがしていて、祐斗はそろっと辺りを見回した。どうやら、人ではない者たちも、ざわついているようだった。