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6話
山上は馴れた様子で署内を歩いていき、ばんっとドアを開けた。部屋の中に居たのは、刑事たちだろうか。山上という部外者が、突然やってきた事に驚いているようで、何も言えないでいる。
「宮前は居るか?」
挨拶もなしに入った山上は、じろりと室内を見回した。低い声は、静まり返った室内によく通る。それに普段では見れないような、威圧感も感じられる。そんな後ろ姿をむつは、にこにこと見ていた。
「おい、誰も返事出来ねぇのか?」
ダメな奴ばっかりだな、と山上はむつと祐斗の方を振り向いている。むつは何が面白いのか、ますます笑みを深めていた。
「あ、あの…宮前にどういったご用件で?」
「宮前は居ないのか?」
「はい、急遽出ておりまして…もう戻ると思いますが、お待ちになられますか?」
「あぁ、そうだな」
当然だといった山上の堂々とした態度に、対応に出てきた刑事もたじろいでいる。体格は山上より大きくても、中身までそうだとは限らないようだった。