1話
「本人に1度、聞いてごらん?はぐらかされたとしても、気にする事なんかないだろ?言いたくない事もあって当たり前なんだ。むつだって隠し事は多かったんじゃないのか?人の事を言えた義理じゃないだろう?」
「うん…」
「あのな、むつ。祐斗君も…一緒に働いているからこそ、言いにくい事もあるんじゃないかなって俺は思うぞ。人の事を、何でもかんでも知りたいっていうのは無理な事でもあるんだからな。俺は宮前さんと一緒に仕事するし、呑みにも連れてって貰って、面倒みて貰ってるけど、宮前さんの事を何でも知ってるわけじゃないぞ」
「そうですけど…湯野さんに関しては、知らない部分が多すぎて。たぶん、俺は西原さんとの付き合いってまだ短いですけど、湯野さんの事より知ってるような気がして…」
「付き合い方はそれぞれだよ。オープンな人も居れば、秘密主義な人も居る。俺と祐斗君は、まだ湯野さんとに比べれば歳も近いし、一緒に道場にも行ってるだろ?仕事以外での付き合いの方が多いんだから、そんなもんなんじゃないか?」
「………」
「………」
「珍しいな、2人揃って同じ悩みか…まぁ2人にとっては、それだけ湯野さんが大切だって事だな」
「うん…だってさ、ご飯行くにしても仕事するにしても3人で動く事って多いもん。だから、元気ないってなると…何とかしなきゃって…」
「そうなんですよ。だから、今夜はむつさんの所で社長抜きで鍋してお泊まりしようって…」




