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6話
「起きたら居なかったって、珍しく颯介さんが気付かなかったって事?凪君ってお家抜け出すの得意な子?」
「…いや、どうかな」
10年近くも離れていたのだから、そんな事分かるはずもなく、颯介はゆるゆると首を振った。朝起きたらと言っていたが、いったいいつから探し回っていたのだろうか。颯介の顔には疲労が浮かんでいる。こんな状況では、電話に出れるはずもなかっただろう。それでも颯介は、冷たいお茶を持ってきた祐斗にほんのりと笑みを見せて礼を言った。
「…もうどこを探したらいいのやら」
ぼそっと呟いた颯介の声には、焦りよりも不安が強いような気がしていた。何とかしてやりたいが、探し物が得意な人間はここには居ない。
「ね、管狐にはお願い出来ないの?」
「…出来なくはないのかもしれないけど」
「まだお願いしてないのね…」
どうやら、管狐には頼みにくい理由があるようで、颯介は迷うような素振りを見せていた。