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6話
唇を尖らせて、悩んでいるようなむつだったが、その顔はすぐに優しげな笑顔となった。その笑顔は、誰かを思ったからこそ浮かんだのだろう。こんな顔をさせられる誰かは凄いな、と祐斗は思った。それと共に少しだけ、ほんの少しだけ悔しくも思った。
「なーいしょ‼」
「…悩んだ結果それか。まぁ悩むくらいなら、まだ誰ってないんだな」
「そういう事かな」
「見当はつけくどな。みやか西原だろ?」
「いちにぃかもよ?」
「お前…あいつはお前が嫌がったとしても全力でお前の味方だろ?この前、連絡来たぞ?寒いけど、むつは元気ですか?ってな。あいつ…俺に対しての気遣いじゃねぇんだよな。呆れて笑っちまったよ」
「もう…何してんの、あの人。恥ずかしい」
本当に恥ずかしいのか、ほんのりと顔を赤くしているむつは、両手で頬を押さえていた。