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6話
むつに指摘された箇所を直しながら、祐斗がキーボードを打つ音が時おり聞こえるのと、時計の針の動く音。それ以外はまた聞こえない、静かな時間だった。ここ数日の、そんな静かな時間は誰にとっても落ち着かない物だ。山上も例外ではない。新聞を読みつつも、机に置いた携帯に、視線が勝手に向かっていた。
コーヒーのおかわりでもいれようかと、立ち上がった山上は、むつと祐斗の真剣な顔を見て、微笑ましく思った。だが、いつもと違う事にも気付いた。
「…むつ?」
「え?」
「お前、また眼鏡変えたのか?」
「これはブルーライトカットのやつ。遥和さんもしてるんだよ、だから真似してみた」
「犬神も眼鏡する時代か…時の流れってのは恐ろしいな。で、むつは視力は悪いのか?」
「うーん…悪くはないけど、凄くよくもない。免許で引っ掛からないくらいかな」
「いつものは伊達か?」
「うん…何かね、目の色変じゃない?」