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6話
「電話しーちゃおっと」
「…彼氏にするみたいだな」
山上の机にある電話の受話器を取ったむつは、軽い感じで番号を押していく。
「暗記してるのか?電話番号」
「よくかける番号は覚えてるそうです」
「記憶力すげぇな…」
2人が感心しているのをよそに、むつは受話器を耳に押し付けている。だが、ややあってから、がっかりしたように受話器を置いた。どうやら颯介は出ずに、留守番電話に切り替わったようだ。
「どうする?」
「…もうちっと待ってみるか。昨日の疲れもあって、また寝坊かもしれねぇしな」
「有るかもね。とりあえず凪君の無事が分かって、颯介さんもほっとしただろうし…」
本当にほっとしたのかな?とむつは意地悪な事も思ってみたが、颯介に限ってそんな事もないだろう。会いにくくても、心配でたまらないという様子は本物だったのだから。むつは自分の根性が曲がっているな、と恥て心の中で颯介に謝った。