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6話
「社長が加わっても最弱よね」
「お前、社長を現場に出す気か?」
「出ないの?昨日は出てきてたのに?」
「………」
むつもタバコに火をつけると、ゆっくりと煙を吐き出した。むつの顔は換気扇の方に向いているが、視線は山上の方に向けられている。
「颯介さん絡みだから出てきてるのかと思ってたけど…違うの?」
「何で湯野ちゃん絡みだと俺が出張るんだ?」
「分かんないけど…付き合い長いでしょ?だから何かと気になってるのかなって」
「長いっても…まぁ長いか。知り合った頃は、まだ刑事だったからな。湯野ちゃんは、こっちに出てきて間もない頃だから…20年はまだ経ってねぇけどな」
「…お兄ちゃんたちより付き合い長いんだ?」
「みやと西原とよりは長いな。晃と20年くらいになるか…そう思うと、あいつおっさんになったな」
「…社長、何歳なの?」
「さぁな…忘れたよ」
少しだけ、しんみりした様子で山上が言うと、むつは何も言わずに頷いた。