326/1090
6話
「何で怒ってるんだ?」
「ちっ…」
言いかけたむつは、話してもいいのだろうかと悩んだ。だが、今回ばかりは頼れるのは山上だけだ。何故か分からないが、颯介の事で一緒に外に出てきてるのだから。
「…何かあったか?」
言うか否かで悩んでいるむつを見た山上は、コートを脱いで椅子にかけた。そして、タバコを持つとキッチンに向かいながらむつを手招きした。誰も居ないのだから、そんな風にしなくてもいいのだが、むつは大人しく従った。
「で、どうしたって?」
「…さっきまで、ちかが居たの」
換気扇のスイッチをいれて、タバコを口にくわえていた山上は、目を見開いて驚いている。普段、細い目でもそんなに開くのかと、むつはどうでもいい事を思っていた。