322/1090
6話
事務所に1番乗りしたむつは、寒いが窓を少し開けた。いくら寒いとはいえど、たまには換気もしなくてはならない。むつはそのまま、窓から下を見ていた。雪も止んだからか、人の姿はいつも通り多い。雪という非日常から日常に、戻りつつあるようでもある。
「…コーヒーでもいれよっかな」
窓を開けているからか、事務所の中はあっという間に寒くなった。吐く息も白く、外との温度差は大してないだろう。
「飲む?」
誰もまだ来ていないというのに、むつは外を眺めながら呟いた。やはり、誰も居ないから返事はない。だが、むつは気にした様子はない。くるっと振り向いて、ソファーを覗くように見た。