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6話
冬四郎のベッドを占領して、ぐっすりと眠ったむつは、ゆさゆさと揺れる感じがして目を覚ました。
「………」
「むつ、そろそろ起きろ」
「………」
薄目を開けたむつは、ぼんやりと見える人影と低い穏やかな声の聞きながら、再び目を閉じた。だが、ばさっと布団を取り上げられると一気に寒くなり、がばっと起き上がった。
「おはよう、むつ」
「…おはようございます」
「寝起き悪いなぁ…疲れてたのか?」
むすっとして不機嫌そうなむつの顔を覗きこんだ冬四郎は、苦笑いを浮かべていた。珍しく起きてこないから、強引に起こしたが悪い事をしたかもと、冬四郎は思っていた。
「うん…ちょっとだけ…まだ寝たいかも」
「そうか、悪かったな。でも仕事は?」
「行く…お兄ちゃんも?」
「仕事だ。ほら、顔洗ってしゃきっとしろ。朝飯用意してやるから」
「…うん」
頷くものの、むつはそのまますぐにでも寝てしまいそうな気配さえある。冬四郎は、そんなむつをベッドから追い出して、洗面所に向かわせた。ばしゃばしゃと音がしてくると、冬四郎は手早く着替えた。