6話
髪の毛を乾かし終わった後も尚、むつは何かと冬四郎に話し掛けていた。だが、そのほとんどはよく分からない会話で、冬四郎はむつが体調でも悪いのかと本気で心配になった。冬四郎はむつの額に手を当ててみたが、熱もないし酒も抜けているようだった。
会話が無ければないで、やたらとひっついてくる。寒いというわけでもないはずなのに、今夜のむつは様子がおかしかった。そもそも、連絡もなしに突然、部屋までやってきたのは初めてだった。それを思うと、今度は一緒に居るのが本物のむつなのかと冬四郎は怪しんでいた。
床に寝転び、携帯をいじるむつを冬四郎はじっと見ていた。見た目は、見慣れたむつだったが、と冬四郎は本気で怪しんでいた。だが、確認するすべはない。
「…なぁに?」
「いや?仕事の連絡か?」
「ううん、なぁちゃんだよ。最近ね、毎晩連絡取ってるの。今度予定合わせて遊びに行こうねって事でさ。こさめも一緒に」
「本当に仲良いんだな」
「うん。こさめが今度は泊まりにおいでよって。でもさ、篠田さんどうするんだろ?」
「…さぁ?こさめさんは篠田さん離れしてきてるんだな」
「かなぁ?」
首を傾げながら、携帯の画面を見ているむつは何やら楽しそうで、はっきまでの違和感はもうどこにも無かった。