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6話
髪の毛の根本が乾いてくると、むつは休憩といってドライヤーを置いた。冬四郎は特にする事もなく、テレビを見ているだけだった。
「終わったのか?」
「まぁだ。面倒くさくなっちゃった…髪の毛キープするのも大変なんだよね」
「切ったらいいだろ?いつから伸ばしてんだ?」
「うーん…気付いたら?でも中学の時はショートにしたよ?面つけにくいから。そしたらさ、軽くって違和感?バランス取れなくなったから」
「…猫かお前は」
「でもね、慣れてるのがなくなるとそうだよ。身体の一部って事だもん。それにね、お母さんは髪の毛長い方が好きなんだよ?いちにぃも」
「母さんは元美容師だからな。兄貴は、女の子ってのは髪の毛長いもんだと思ってるのかもな。その方が、女の子らしいって」
「それはある。ふりっふりの服着せたがるし…あたしも嫌いじゃないけどさ、ある程度なら」
「人形みたいなもんだな」
「着せ替え人形?でも、そうかも…お兄ちゃんたちが、今のあたしを作り上げたのかも」
くっも歯を見せてむつが笑うと、冬四郎は呆れたように笑った。