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6話
「弟さんは、湯野さんに保護されたか」
「弟君から連絡貰ってたらしいわよ。今日、事務所に来たもん…依頼を持ってだけど」
「依頼?それで弟さんは家出して来たのか?」
「そうなのかな…たぶん」
「そうか。まぁ無事ならいいか…コートくらい脱げよ。部屋ん中寒いか?」
「脱いだら長居しちゃうもん…」
「泊まっていけばいい…っても着替えがないか。着替え取りに行って泊まるか?」
コーヒーをいれる用意をしていた冬四郎は、手を止めてむつの方を見た。泊まる事を前提な話ぶりに、むつはきょとんっとした。だが、だんだんと嬉しそうな顔付きとなった。
「…ほら、行くぞ」
むつの顔を見て言わずとも分かったのか、冬四郎は嫌だとも面倒だとも言わずに、上着を着ると鍵を掴んだ。