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6話
数えるくらいしか通った事のない道は、人影がなく雪がしっかりと積もっている。全然、車も人も通らないんだなと思いながら、むつはマンションの前までやってきた。そして、オートロックの前でインターフォンを鳴らした。ぴんっぽーんとのんびりした音がする。だが、誰か出る気配はない。もしかしたら、仕事で居ないのかもしれない。連絡もしなかった自分が悪いが、がっかりしていた。
『…はい?』
「あっ‼お兄ちゃん‼」
帰ろうと、インターフォンから離れかけた所で、いぶかしむような声がすると、むつはインターフォンに飛び付かんばかりの勢いで振り向いた。
『…むつか?』
「うん‼開けてぇ」
『何してんだよ…早く入れ』
飽きれたような声だったが、すぐにオートロックの開く音がした。むつは嬉しそうに頷くと、ドアを開けて入っていった。