306/1090
6話
むつが酔ってきたのもあり、3人は居酒屋を出ると、駅前でわかれた。そして、それぞれの使う電車で帰路についたいた。
祐斗と山上に大丈夫かと心配されていたむつだったが、2人とわかれると楽しそうだった顔からは、さっと表情が消えた。怒ってもいるような顔つきで、電車に乗り込むと携帯を見た。来ていたメッセージを読み、手早く返事をすると疲れたようにドアにもたれた。
電車の中は、むつと同じく少し呑んだ帰りといったサラリーマンが、ぽつぽつと乗っている。連日の雪で、会社も早めの帰宅でも促しているのか、人は多くはない。座席にも空席がある。だが、むつは座る気にはならなかった。座れば立つのが嫌になる。それが、分かりきっていたからだ。
地下鉄だから、ドアの窓から外を見ても真っ暗で、疲れた顔の自分が見えているだけだった。むつは、そんな自分の顔を見ながら、どうしようかなと考えていた。自分の事もそうだったが、颯介の事だ。