6話
「うん…離縁考えてたけどね。もう言えないかな…って。それにさ、やっぱり先輩との付き合いも何だかんだ長いから、お互いの事って分かってるから…居心地いいんだよね」
くいっとチューハイの飲み干したむつの頬は、少し赤くなっている。最近では、酒も弱くなってきているのかもしれない。ほんのり酔っているようなむつの目は、しっとりと濡れて潤んでいる。あまり見れない色っぽさがあり、祐斗は目を離せなかった。
「でもね、比べてるうちは…違うんじゃないかなって。好きなら、理由ないんじゃないかなって…」
「むつは気が多いくせに、変な所で純粋つーかなんつーかなぁ…すぐには人を好きにならないしな」
「そうね。簡単には…付き合ったり出来ない。先輩の時もさ、一目惚れだったくせに、そっから…半年は時間必要だったし」
「一目惚れ!?誰が!?誰に‼」
ええっと祐斗は叫んだ。山上はすでにそれは聞いていたからか、嫌そうな顔をしている。
「むつが西原にだとよ。有り得ねぇ」
「…まじっすか」
「ほっといて。もう!!何で、こんな話になってるのよ…颯介さんの話するのに来たはずなのに」
ぶちぶちと文句を言いながら、むつは唐揚げにレモンをぎゅうっと搾って、かぶりついていた。